NPO法人 赤ちゃんからのアートフレンドシップ協会
アートで子育てをコンセプトとし、0歳から大人の方まで誰でも参加することのできるワークショップや家族鑑賞会を柱として活動しています。美術館や行政との協働事業、保育園・幼稚園や学校への出張講座で社会における美術教育にも力を入れています。正会員19名、賛助会員39名、ボランティア22名
《代表の冨田めぐみさんにお話をうかがいました》
子どもの主体性を尊重する活動
幼少時代から美術、演劇や音楽に親しみ、大学で心理学を学んだ冨田さん。「子どもの自主性を尊重する」色彩心理の先生の考えに共感し、子どもの創作や大人向けの色彩心理の講座を運営する団体で多数の企画を手がけました。
出産を機に、地元・茅ヶ崎で独立し、親子を対象にしたワークショップを始めることに。ポスティングから独りで始め、回を重ねるごとに人が人を呼び、スタッフとなる仲間も増え、2007年、前身となる市民団体アートケアひろばが誕生しました。
その後、家族鑑賞会の活動がきっかけで、2014年NPO法人赤ちゃんからのアートフレンドシップ協会を設立しました。「赤ちゃんも絵画を見て反応するし、好みもはっきりしている!」という気づきから生まれた赤ちゃんを中心に鑑賞を楽しみ、子育てのヒントを解説する鑑賞会は珍しく、美術界でも話題になりました。
美術館からの依頼も増え、2014年、市民提案型協働推進事業に採択されたことで、幼稚園や保育園に美術みるっこ®プログラム※を導入してきています。市との協働は、団体としての信頼度を高め、活動の幅を広げることになりました。
アートでつながる親子の絆
団体のワークショップの特色は、「美術・芸術を通じて、親子の心のケアのきっかけを作る」ことです。
参加する子どもには「今日は何する?」、ご家族には「子どものアシスタントになってくださいね」と声掛けします。ここでは、子どもの自主性に任せ、絵を描いたり、工作をします。子どもが考える時間をきちんと確保し、大人が少しこらえることが大切になります。子どもが“ひとりの人”として自分とは違う考えをもっていることに気づくと、子育てが楽になる親御さんが多いそうです。
家族が子どものことを認め、信頼されていると子どもが実感していると、学校や園などで思い通り行かなかったときも乗り越える力が湧きます。信頼と安心感のもとで子どもは前に一歩進むことができるのです。
ワークショップでもう一つ大切にしていることは、「記録」を残すということ。その日と最近の様子など子どもの成長記録を親に書いてもらい、それに対して返事をします。創作物に表れる子どもの発達やメンタルの様子に加え、学校や園での生活や育児面で困っていることがあれば、具体的にアドバイスをします。
回を重ねることで見えてくることもあるといいます。子どものアートの成長とともに育児記録として、家族の宝物になって喜ばれているとのことです。
アートの持つ可能性をこれからの社会に
8月にみるっこ®プログラムの一つである“テレパシーおえかき”のワークショップを見学しました。
この“テレパシーおえかき”は、美術館に出向いたり、人とのコミュニケーションをとることができなくなったコロナ禍で、オンラインを活用することで、絵画を鑑賞したり、参加者が楽しんでくれるような試みはないかと冨田さんから提案のあった新しい企画でした。
今回の参加者は園児たち30名と小学生親子の1組。進行役が、手元にある絵画について、「犬がいます」「右側に赤いドアがあります」と具体的な説明をテレパシーするように送ります。その言葉を聞いた園児たちが、どんな絵なのか想像しながら画用紙に描いていきます。最後に園児たちの絵をみせてもらうといった流れでした。
テレパシーという言葉がオンラインを通じてつながっていることを意識させ、伝えた言葉で出来た絵を見たときの単純な面白さとともに、鑑賞した絵画が茅ヶ崎市美術館にあり、展示されることがあると解説を聞くと、自然と「美術館に行ってみようかな?」と思いました。ライフスタイルから縁の遠いように感じていた絵画鑑賞というアートの世界が、ぐっと身近に感じることができました。
冨田さんは「今後の活動でも、アートに触れる機会を多くの方に提供し、アートでの新しい発見をしてほしい」と語ってくれました。プラス思考の冨田さんにまだ知りえぬアートの可能性をもっと広めていってほしいと願っています。