【開催報告】1/31(土)SDGsカフェ15「みんなで描く ちがさきの未来」~他主体連携によるSDGsの推進を通して~
SDGsカフェは、多様な活動主体がパートナーシップを形成し、参加者同士が顔の見える関係を築く「きっかけ作りの場」として、全14回にわたり継続されてきました 。今回は、第15回目にあたります 。
これまで環境・福祉・教育など、多岐にわたる分野のゲストに登壇していただきました。今回は過去のゲストたちも会場に駆けつけ、これまでの歩みを振りかえりつつ、多主体連携による持続可能な地域づくりについて。皆様と一緒に考える機会となりました。

日 時:2026年1月31日(土) 14:00~16:00
会 場:ちがさき市民活動サポートセンター
プログラム:
・ゲストスピーカーによる講演
「多主体連携によるSDGs活動に踏み出そう! ~全国の実践から学ぶ~」
・質疑応答
・グループワーク
(自己紹介、課題と原因の書き出し、つながりとパートナーについてアイデア共有)
・全体会(各グループのアイデア発表、発表内容の共有)

ゲストスピーカー:
星野 智子さん(一般社団法人 環境パートナシップ会議 代表理事)
◆講 演
「多主体連携によるSDGs活動に踏み出そう!~全国の実践から学ぶ~」
はじめに~自己紹介~
私にとってのSDGsの原点は、自身がリーダーを務める「田んぼの学校」にあります 。ここでは、単なる農業体験に留まらず、食育だったり、外国人の人と一緒にやったり、過疎化している地域の問題を一緒に考えるなど、多様なことが実践できる場になっています。
現在、私は、渋谷の国連大学内にある「地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)」の運営責任者を務めています 。ここは環境省が設置した施設であり、市民の相談や交流の拠点となっています 。また、全国8箇所にある「環境パートナーシップオフィス(EPO)」とも連携し、地域の「地域循環共生圏」づくりや協働事業の伴走支援を行っています 。
SDGsの基本概念と多様な主体の役割
SDGs(持続可能な開発目標)は、その前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)の8目標から17目標へと拡大しました 。この目標数の増加は、地球規模の課題が多様化した側面もありますが、3年という歳月をかけて市民社会を含む多くの意見を反映させた結果であり、非常にポジティブな変化と捉えることができます 。特に、ジェンダーや格差といった項目が独立した目標として維持されたことは、市民社会による粘り強い働きかけの成果といえます 。
SDGsの最大の特徴は、従来の国連条約が「国家(ステート)」を主対象としていたのに対し、全ての関係者(ステークホルダー)に役割があることを明記している点にあります 。これは私たち一人ひとりにも役割があることを意味しており、市民にとっては「地球規模最大の市民活動プログラム」であると解釈できます 。ボランティア活動や日常の取り組みの全てがこの包括的なプログラムに繋がっているのです 。
日本政府の取り組みと推進体制
日本政府は2016年、首相を本部長とし、全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」を設置しました 。これは同年に開催されたG7伊勢志摩サミットを見据えた動きでもありました 。政府は国際的な17目標を日本独自の文脈に整理し、「あらゆる人々の活躍」や「健康長寿」などを含む8つの優先課題を掲げています 。
また、SDGsの実施指針を策定し、毎年「アクションプラン」を公表するほか、優れた取り組みを表彰する「ジャパンSDGsアワード」などの制度を通じて普及を図ってきました 。特筆すべきは、推進本部内に設置された「SDGs推進円卓会議」です 。ここでは従来の有識者会議の枠を超え、ビジネス、金融、市民社会、消費者団体、そして次世代(ユース)を含む11の多様なステークホルダーが参画する、マルチステークホルダー・プロセスが導入されています 。
市民社会の役割と「SDGsジャパン」の活動
SDGsの推進において、市民社会組織(NPO/NGO)は欠かせない役割を担っています 。日本における主要なネットワーク組織である「一般社団法人 SDGs市民社会ネットワーク(SDGsジャパン)」は、環境、開発、人権、ジェンダー、障害、消費者など、約130の多様な分野の団体で構成されています 。
このネットワークは、大橋氏や三輪氏をはじめ、国際協力や人権問題に精通した専門家、地域活動の実践者、そしてユース世代によって運営されています 。主な機能として、政策提言、広報・啓発、そして各セクターを繋ぐ連携推進の3本柱で活動しており、現場の声を政府や国際社会へ届ける重要なハブとなっています 。

世界と日本におけるSDGsの達成状況
SDGsの進捗状況は毎年ランキング形式で発表されています 。2024年の報告では、日本は167か国中19位という結果でした 。過去には11位を記録したこともありましたが、近年は20位前後を推移しています 。
世界全体で見ると、目標達成への軌道に乗っているターゲットはわずか18%に留まり、遅れや停滞が懸念される由々しき事態となっています 。2030年までの残り数年間で、いかに最大限の力を尽くせるかが問われています 。ランキング上位を占めるのはフィンランド、スウェーデン、デンマークといった北欧諸国であり、日本はアジア圏ではトップクラスにあるものの、上位諸国と比較すると依然として多くの課題を残しています 。
日本の課題:ジェンダー平等と環境問題
日本の進捗を項目別(通知表)で見ると、目標3「健康と福祉」は国民皆保険制度などが評価され、高い水準にあります 。しかし、目標5「ジェンダー平等」や、目標13・14・15の「環境関連目標」については深刻な「赤点(未達成)」評価を受けています 。
ジェンダーに関しては、女性の就労数は増えているものの、国会議員の女性比率の低さや賃金格差など、意思決定層への参画や構造的な不平等の是正が大きな課題です 。また、環境面では気候変動による気温上昇や自然災害の増加に加え、生物多様性の損失も深刻です 。例えば、気温が2度上昇すれば珊瑚礁は全滅すると予測されており、それは海の生態系の崩壊と、私たちの食卓への深刻な影響を意味しています 。
SDGs達成に向けた先進的事例:フィンランド
常にランキング1位を維持しているフィンランドは、日本の目指すべきモデルの一つです 。同国は教育(大学まで無償)や社会保障が充実しており、格差を嫌う社会的土壌があります 。
政治の透明性が非常に高く、国会議員の女性比率は約47%に達しています 。2023年まで37歳の女性が首相を務めていたことも象徴的です 。また、SDGsランキングだけでなく「世界幸福度報告」でも1位を獲得しており、社会的支援の有無や自由度、心身の健康といった指標において、人々が真に豊かさを実感できる社会を実現しています 。
持続可能なまちづくりと消費・生産
地域での実践において重要となるのが目標11「住み続けられるまちづくり」です 。ここには安全な交通手段の確保や、住民参画による都市計画の推進などが盛り込まれています 。自治体に対し、住民の声を反映したまちづくりを要請する際の根拠として活用できます 。
また、目標12「つくる責任、つかう責任」に関連して、日本ではフードロスの削減が着実に進んでいます 。かつて年間600万トン台だった廃棄量が500万トン台に減少したのは、SDGsという共通目標のもとでスーパーや消費者の意識が変化した成果といえるでしょう 。単に「意識を持つ」だけでなく、情報の透明性を確保し、具体的な行動に繋げることが求められています 。
個人と地域で進めるアクションと意識変容
SDGsを達成するためには、家庭内でのリサイクルやコンポストといった個人的な取り組みだけでは不十分であり、それだけでは目標の35%程度しかカバーできません 。より大きな変革のためには、プラスアルファの視点が必要です 。
例えば、地元の産業を応援すること、環境に配慮した企業から購入すること、さらには地域の政治家や行政に対してSDGsの視点を持つよう働きかけることが重要です 。また、活動を継続させるためには、自分自身が楽しみ、笑顔で取り組むことで他者を巻き込む「楽しいオーラ」を創出することも大切な戦略です 。
社会を変える三つのドライブと健康の重要性
社会を変えるには、以下の3つの「ドライブ(原動力)」を組み合わせる必要があります 。
① 制度・仕組み(政治・行政):ルールや支援策を整える
②技術・経済(企業・ビジネス):持続可能な商品やサービスを開発する
③ 学び・気づき(教育・市民活動):人々の意識と行動を変える
この3つをベストミックスさせることが解決への近道です 。また、市民一人ひとりが健康に留意することも立派なSDGsアクションです 。国民が健康でいることで医療費を抑制できれば、その余剰予算を教育や環境保全に充てることが可能になるという、非常に合理的かつ建設的な視点です 。
国内各地の先進事例:岡山、富山、秋田
各地で展開されているSDGsの取り組みには、地域特有の強みがあります 。
岡山県:
「ESD(持続可能な開発のための教育)」の先進地であり、公民館、大学、自治体が重層的に連携しています 。水害という困難を機に、市民が主体となって「協働の協定書」を市に提出するなど、対話を通じた信頼関係が強固な土壌となっています 。
富山県:
SDGsを「課題と人を繋ぐツール」として活用しています 。毎月開催される「SDGsアクションミーティング」では、バラバラな課題を「みんなの課題」として捉え直し、解決策を議論しています 。また、能登半島地震の経験から、平時の繋がりを災害時の支援に活かす「しなやかな連携体制」を構築しています 。
秋田県:
「高質な田舎(こうしつないなか)」を掲げ、誰もが豊かな心で新たな挑戦ができる地域モデルを追求しています 。中間支援組織のプラットフォームを形成し、都市企業の研修を受け入れるなど、現場の価値を外部へ発信することで地域に活力を生み出しています 。
連携の仕組みと垂直・水平のネットワーク
今後の活動を効果的に進めるための鍵は、市民活動における「縦と横の連携」にあります 。
横の連携(水平):
地域のNPO、広域の全国組織、国際的なNGOが情報を共有し、連携することです 。地域は現場の実態を持ち、広域組織は国際的な動向を知っています 。
縦の連携(垂直):
それぞれが茅ヶ崎市、内閣府、国連といった各レベルの政策主体に働きかけるチャンネルを持つことです 。
地域で得た知見を全国へ届け、国際社会の動向を地域へフィードバックする。この「垂直と水平」の好循環を市民が主体となって作り出すことで、社会を変える大きなエネルギーとなります 。SDGsは「誰も取り残さない」ための共通言語であり、このプラットフォームを活用して対話を促し、具体的な施策の隙間を埋めていくことが私たちの役割です 。
星野さんの講演後、グループワークを行いました。

①地域で課題だと思うこと、関心のあることや取り組んでいること、その原因の洗い出し
②SDGsの目標との関係性について考察(矢印でつなげてみる)
③できること・パートナー発見タイム
~自分で(家族や仕事で)でできることと、一緒に活動する人や組織についてアイデア出し
■発表後、共有した意見
・対話を軸に価値観を認め合い、つながりを生む場づくりが重要
・地産地消のため専門家と生活者が連動、資源循環も考えたい
・自治会を活用してほしい、伝統文化を伝えたい
・多様性を尊重し、共助の仕組みづくりを進めていきたい
・世代・立場を超えた交流と地域活性化を図りたい
・ハブとなる拠点としてサポセンに期待
■星野さんの講演についての感想
・基本的な部分の復習と内容のアップデートができ良かった。
・SDGsの世界の動きを知ることができて良かった。
・最近17のゴールや169のターゲットの話をしなくなったなと、しみじみ感じた。
・SDGsについて、あらためて学ぶ機会になった。講演を聞いて、「思う」だけじゃダメなんだと思い知らされた。「行動」に移すことの大切さも知ることができた。
・多主体をつなぐ実際の経験(苦労話や知見など)をもう少し知りたかった。
■グループワーク・全体会の感想
・地元を元気にするためのアイデアを短い時間だが真剣に話す機会となり、楽しかった。
・色々な分野の方とのコミュニケーションが楽しかった。
・普段はふれないテーマや分野の話題を知ることができ、視野が広がってとても学びになった。
・自分とは全く違った視点の様々な活動をしている方の話が聞けたことで、頭のなかが少し整理された気がする。
・自分自身がこれまで全く地域に根ざしていなかった分、地元の住民として、この地域に深く関わってきた方の実体験やそれを踏まえての意見を聞かせていただき感謝。
・なかなか正解のないテーマだが、いろいろな気づきがあった。
・課題はつながっていて、課題解決の方法もつながっていると感じた。
・自分にできるところからアクションしていきたい。
◇ ◇ ◇
「SDGsカフェ」は今回で終了しますが、引き続き、多様な分野で活動する参加者同士が、学び交流し、顔の見える関係を築くきっかけづくりの場を企画提供していきます。

