【開催報告】2/27(土)ZOOMオンライン開催「地域の居場所づくり交流会V@茅ヶ崎」~居場所をデザインする
今回で5回目となる「地域の居場所づくり交流会Ⅴ」は、新型コロナ感染症に伴い発令された緊急事態宣言の中、ZOOMを用いたオンライン方式で開催しました。
日 時:2021年2月27日(土)14:00~16:45
会 場:ZOOMオンライン開催
参加者数:25名
講 師:
奥山 千鶴子さん(認定NPO法人びーのびーの理事長)
事例発表:
永田 恵子さん(みんなの居場所「びすた~り」)
山根 擁子さん(BOOK PORT CAFE)
平國 祥子さん(地域包括支援センターさざなみ)
< 講 演 >「商店街で始めた親子の居場所づくりから 次なるステップへ ~地域、企業連携~」
「子育て家庭の孤立、支えられ感のなさを払拭したい!」
奥山さんのこんな「想い」から生まれたのが、「おやこの広場びーのびーの」でした。現事務局長の原さんと奥山さんが中心となって設立準備を進め、2000年に商店街の一角に「おやこの広場」を開設しました。当時、「おやこの広場びーのびーの」に通っていた利用者が、今は「NPO法人びーのびーの」のスタッフとなり、活躍をしています。
現在、「NPO法人びーのびーの」では、多様な子どもの保育の場を保障するため、認可保育所、小規模保育、ファミリー・サポート・センター、一時預かり、預かり保育に取り組んでいます。
企業との連携に関しては、ショッピングモール「TRESSA」でのイベントの開催や「びーのびーのガイド」(幼稚園・認定こども園、保育園)の発行に取り組んでいます。ショッピングモールのような場に出かけてイベントを開催することで、公的な場では出会えない親子と関わりを見つけられることが大きな利点と考えています。
「NPO法人びーのびーの」は、港北区内に2つの「港北区地域子育て支援拠点どろっぷ」を運営していますが、いずれも公共施設ではなく、民間の土地に建てた民家を利用しています。運営費は、横浜市の委託料で賄っています。「どろっぷ」では、障害児支援の一環として、地域に開かれた「オープンガーデンづくり」に取り組んでいます。
数年前、「COCOしのはら」という多世代交流の拠点をつくりました。ここでは、子どもから大人、高齢者まで、文字通りの多世代交流が実現しています。また、地域住民の社会参加の一環として、地域の人が講師となって、琵琶語り、コーラスなどの活動をしています。これからの共生社会には、子育て支援のように「地域課題の解決を目指した地域づくり」と趣味・関心事から「人と人のつながりを創るまちづくり」の両面からアプローチすることが重要だと考えています。
最後に、住民主体の居場所づくりにとって何が大切かを話します。それは、当事者同士の支え合いを育むこと、子育てを入口に多世代の支援循環つくること、応援された人が応援する側になっていくこと、困難を抱える家庭へのアウトリーチ(訪問支援)だと思います。
<事例発表>
★みんなの居場所「びすた~り」(永田恵子さん)
居場所の名称となっている「びすたーり」は、ネパール語で「ゆっくり・のんびり」という意味です。現在居場所として利用している場所はNPO法人セカンドリーグ神奈川が管理し、ネパール支援を行う「サンチャイねぱるぱ」が運営を行っています。「サンチャイねぱるぱ」は、ネパールのパルパ郡を支援するグループです。コーヒー豆を現地から仕入れて焙煎した後にイベントなどで販売し、その収益をお米に変えて送る活動をしています。
みんなの居場所「びすた~り」が設立された経緯をお話します。以前、カフェを運営していた時、障害者の雇用を考えましたが、カフェは収益率が低く実現することができませんでした。ある時、リサイクルショップを開けば障害者を雇用することができるかもしれないと思い、ある時、その構想をNPO法人セカンドリーグの人に話してみたのです。そうしたら、話がとんとん拍子で進み、市の空き家バンクに登録していた家を借りることができたのです。
みんなの居場所「びすた~り」は、南湖地区にある2階建ての一軒家。今日は、写真で部屋の様子を紹介します。1階には「くるくる文庫」という本棚のある部屋、リサイクル室、コーヒーを飲める居間、和室、マッサージ等ができる小部屋などがあります。(※2023年 活動場所を十間坂へ移転しました)
みんなの居場所「びすた~り」では、色々なイベントを企画しています。先日は着物フェアを開催しました。また、「手仕事ひろば」という催しも開催しています。現在、運営に関わるコアメンバーは9名で、サポートメンバーが10名。その他、毎日ここにきてくれるボランティアもいます。3月31日には、こども祭りを開催しますが、こどもたち自身がボランティアとして関わってくれています。
1人ではできないことをみんなの知恵を出し合って、個性を生かして、楽しく乗り切っていきたいと思っています。
★BOOK PORT CAFE(山根 擁子さん)
去年の5月にBOOK PORT CAFEを開店し、9か月経ったところです。場所は富士見町で、平和学園のすぐ側にあります。席数は7席で、こじんまりしたお店です。
まず、このお店を開いた動機をお話します。一つ目は、本が好きだからです。二つ目は、本の楽しさを伝えたいと思ったからです。子育てをする中で、学校の読書活動に携わったり、ボランティアとして昔話を子どもや大人に読み聞かせをする活動をしたりする機会がありました。こうした中、情報として消費される本ではなく、先人たちの知恵の贈り物としての本を丁寧に伝えていきたいと思ったのです。三つめは、カフェのある場所が、かつて実家があった場所だったからです。
お店の中には、文芸書を中心に自分の蔵書が約1200冊あります。ブックカフェには明確な定義はありませんが、本があってお茶が飲める場所だと思ってください。本があることで、安心して落ち着いた雰囲気が醸し出せる気がします。
人が集まれる機会を増やしたいと考え、コロナの状況を見ながら、いつくかイベントを開きました。太宰治の『走れメロス』やO・ヘンリーの『賢者の贈り物』を取り上げて、読書会を開催しました。短編で馴染みのある本を取り上げた理由は、色々な切り口で参加者同士が意見交換をすることができ、様々な気づきがあるからです。『走れメロス』を取り上げた会の参加者は、10代、30代、50代、60代とバラエティーに富んでおり、多世代交流の場となりました。
読書会以外に、ビブリオバトルを定期開催しています。ビブリオバトルとは、自分の好きな本・お勧め本を各自が一冊紹介して、どの本が読みたくなったかを決めるゲームです。ビブリオバトルを通じて、多様な本に出会うことができるのです。
BOOK PORT CAFÉでは、店内の本を貸し出すというサービスもしています。このサービスを「舫(もやい)本」と読んでいます。船と船をつなぐことを舫(もやい)というのですが、これになぞらえて、本と人、人と人をつなぐことができたらいいという想いを込めて名付けました。
今後の抱負として、例えば、近隣の学校の生徒にお勧めの本の紹介ポップを書いてもらいたいと思っています。これからは、家庭でも、学校でも、職場でもない場所、サードプレスとして、地域に人と一緒に新しい物語をつくっていければと思います。
★地域包括支援センターさざなみ(平國祥子さん)
今年度は、地域包括支援センターさざなみと茅ヶ崎市社会福祉協議会の協働事業として、趣味の活動をしている人やこれから活動をしたいと思っている人に取材し、人の情報を集めた冊子づくりに取り組みました。冊子には、58人分の情報が掲載されており、病院や飲食店など計54か所に冊子を配布・設置しました。
今日は、どうしてこの冊子を作成することになったのか。冊子作成の過程で出会った人々のこと。そして、人々との出会いを通じて「今思うこと」についてお話をしていきます。
遡ること2年前、小倉さんとの出会いがありました。長年高齢者が集まる場所をつくりたいと思っていた方で、今自宅でカラオケサロンを開いています。とても魅力的な方で、小倉さんと話をしているとパワーをもらいます。
地域の人を小倉さんに紹介したいと思い、口頭で彼女の魅力を説明をするのですが、なかなか相手に小倉さんの魅力が伝わらず、うまくつながらないことが何度かがありました。そのうち、小倉さんの魅力を伝えるチラシのようなものがあったらいいなと思い、実際にチラシを作ってみると、小倉さんの魅力が一気に伝わるようになったのです。次にきっかけとなったのは小川さんです。ご自宅を訪問した際に、チラシの話をしたら、「とてもよい試みなので、私も協力する」と言われ、すでに趣味活動をされている人だけではなく、何か活動をしたいと思っている人の情報も載せた冊子がつくれたらいいと思うようになりました。
冊子作成を事業化するきっかけになったのは、地区診断や地域ケア会議でした。介護予防には活動に参加することが大事だということで、趣味活動に関するアンケート調査を実施しました。その結果、サロンを立ち上げても固定メンバーだけで続けていると自然消滅してしまうので、メンバーの新陳代謝が必要であること。また、高齢者は年を追うごとに足腰が衰えてくるので、自宅の近距離圏に通える場所があることが重要だということが見えてきました。
そこで、開催したい人と参加したい人の橋渡しをする冊子づくりをしようということになり、掲載を希望する人の募集を始めました。お陰様で色々な方にお申込みいただきました。例えば、自宅の広い庭を活用して「花を楽しむ会」「月をみる会」「ガーデンサロン」などを開いている田川さんは、「自分の企画で近所の人が知り合いになったら素晴らしい」とおっしゃいました。
冊子作成の取材とチラシ作成を通して、情報掲載者を尊敬する気持ちやもっとPRしたいという想いが生まれてきました。
ウクレレとフラダンスの情報を冊子に掲載した小島さんから、「養護学校の子ども達にフラダンスを教えたい」という話を聞きました。自分たちは、他機関・団体との連携・協働を進める際に、高齢者を中心に考えがちですが、これからは、高齢者以外の方々も視野に入れた連携・協働を考えていきたいと思います。
今後、高齢化率はどんどん上昇するとの予測が出ています。そうした中、「予算がない。担い手がいない。」という話を頻繁に聴きます。しかし、冊子づくりの過程を通じて、私は、担い手不足ではなく、担い手になる人と出会えていないだけではないかと思うようになりました。これからも皆さんに力をいただきながら、さらに取り組みを広げていきたいと思います。
<グループワーク>
最後は、ZOOMのブレイクアウトルーム機能を使って5つのグループに分かれ、「講演・事例発表を聴いての気づきの共有」と「居場所づくりに関し手自分ができること」の2つのテーマで情報交換しました。
「何か地域で活動をしてみたいが一歩踏み出せない。今日の講演と事例報告を聴き、何かしてみたというエネルギーをもらえた。」
「お店などに本棚を置くことで、人と人のつながりができると思った」
「『地域包括支援センターさざなみ』が作成した冊子を、市内すべての地域でつくれるとよい」など、様々な意見が出ました。
<アンケート(オンライン)>
・とても有意義な講演内容、事例発表でした。皆様の創意工夫、情熱に驚き、自分達も地域の為に何か出来るできる、一歩踏み出す元気をもらいました。ありがとうございました!
・いろんな方の事例報告が聞けて良かったです。zoomでのやりとりがまだ慣れていないせいもあり、チームセッションなどは、実際に顔を合わせている時の空気感や感覚のようなものを感じとる事が難しかったです。コロナ禍にもかかわらず、開催して頂きありがとうございました。
・一日で様々な事例を知ることができ、大変勉強になりました。アウトブレイクルームを使用したグループワークは、対面と同じような感覚で話し合いをすることができ、こちらも実りあるものでした。